種の定義


← ツノヤハズのページへ

【個体に基づく種概念】

 類型的種概念から生物学的種概念への変化は,「集団があり,個々の個体はそ れに属す.」から「個体が集団を構成する.」への変化であったといえます.

 しかし,文章上は普通,下のように集団に対して記述する形で定義されます.

種は相互に交配する自然個体群のグループで,他のこのようなグループと生殖に関して隔離されたもの.(Mayr, 1969)

 しかし「個体群」に基づいて記述しているこの定義は,「個体」に基づいて次のように書き換えることができます.

2個体が直接または間接に共通の子孫個体を持ちうるとき,その2個体は同種である.そして種は互いに同種である個体からなる最大の集合である.


【種の定義】

 基本的に生物学的種概念に従い,[種],[同種],[直接同種]を下記のように定義しています.

[種]:
互いに[同種]である個体からなる最大の集合
注:従って[同種]である他個体が存在しない個体は,一個体で一種を構成します.

[同種]の再帰的定義:
ある個体 a について,別の個体 b(ただし b≠a)が{(a の[直接同種])または(a の[直接同種]ではない a の[同種])}と[直接同種]であるとき,b は a の[同種]である.
注:ここで[同種]は個体と個体の間に定義される点に注意が必要です.定義上2つの個体は対称ではありませんが,一般に[b は a の同種]のとき[a は b の同種]であり,[b が a の同種ではない]のとき[a は b の同種ではない].そこで,[a と b は同種]あるいは[a と b は同種ではない]という対称な言い方をしても特に問題はなでしょう.


図.2個体間の「直接同種」(左)と「間接同種」(右)

[直接同種]の定義:
任意の2個体が交雑可能である場合,2個体の組を[直接同種]とする.
注:定義上,同性は直接同種ではありません.任意の2個体の組には同一個体の組を考える必要はありませんが,考える場合は,同一個体組は同性ですので直接同種ではないことにしたほうが一般的でしょう.また,[c と d の組は直接同種]というべきところを,[c と d は直接同種]と言っても特に問題はないので,そうします.

 交雑可能性の基づいて個体間に定義される[同種]を基礎として,その[同種]関係のネットワークでつながる最大範囲が[種]という考え方です.


図.「同種」のネットワークとして存在する2つの種

 [種]に関する常識的な言明は,上記の定義から定理として導かれるものであり,特に定義の中に盛り込む必要はありません.

  1. 全ての個体はいずれか1つだけの種に含まれる.
  2. 別の種に含まれる個体の間には子孫が生じない.
↑ 文頭へ ↑

種の同定のページへ →