昆虫学会52回大会講演要旨

弘前大学教養部(弘前)

1992年9月


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【ツノヤハズの種分化】

 パソコン上に両性生殖する個体群「ツノヤハズ」を作った.これにより,交雑個体群の隔離,接触,部分絶滅,差異化,再接触などの過程を数百〜数万世代にわたって追跡することができる.これを使った実験をもとに,種の定義,種分化等について考察する.

 このツノヤハズ個体群は有限(せいぜい数百)の個体からなり,二次元の「地図」上に分布し,隣接する雌雄の交雑によって繁殖する.各個体は性別のほかに5つの属性を持ち,属性は単純化した遺伝機構によって次代に遺伝する.世代は重ならない.

 生殖にのみ影響する3つの属性はそれぞれ,配偶行動,交尾器形態および生理的性質を規定するものとし,これらのうちどれかに許容基準以上の差異がある場合には交配が成立しない.

 他の2つの属性は生存にも交配にも影響しない全く中立な形質を支配するものとし,実験の際にはマーキングに用いる.うち1つは母系遺伝する.それぞれの属性の突然変異の頻度および差異の許容基準は任意に設定できる.

 地図を構成するヘックスには標高があり,それによって生存可能性が決まる.すなわち,生存不可能な領域や生存困難な領域を配置して,様々な程度の隔離を再現することができる.

 ここでは個体の個体群内部に対する適応のみを取扱い,環境に対する適応は排除している.

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