1997年4月
演者はパソコン上に両性生殖する人工生命「ツノヤハズ」(など)を作った.これらは個体が平面上に分布し,隣接する雌雄の交雑によって繁殖するが,配偶行動,交尾器形態,生理形質の相違により各段階の生殖的隔離が起こる.これらの形質は遺伝および突然変異する.平面の各地点には標高があり,生存率を規定するので「安定した生息地」や「通過困難な地域」などを平面上に適宜配置して個体群の挙動を観察することができる.
この人工生命で実験的に生成される生物地理史は,推定によって復元される現実の生物地理史に較べ,極度に単純化されてはいるものの,不確実性の小さい歴史記録として価値を持つと考えられる.
本講演では,基本的なルール,これへの生物学的種概念の適用,再現される種現象および生物地理的現象について述べる.また,生物地理学的研究へ人工生命的アプローチの有効性を主張する.