側所的種分化
← 実験例のページへ
← ツノヤハズのページへ
目的
分布の連続性を保ったまま種分化をおこすのが側所的種分化です.これを,「地域による異なる選択」の要因なしに,再現しましょう.このとき,地域の生存上の好適さ(/困難さ)そのものではなく,それに格差があること要因となります.
方法,設定
- マップ:Bar.trr
- 生存率:
- 条件 1: 1.00, 1.00, 0.72, 0.68
- 条件 2: 0.68, 0.68, 0.68, 0.68
- 条件 3: 0.68, 0.68, 0.66, 0.52
- 変異率(許容差異):0.01(5), 0.01(5), 0.01(5), 0.001, 0.001
- 観察世代:0 〜 10,000
- 操作:なし.
図.生存率設定の異なる3条件
結果
条件 1 と 3 では,接触を保ったまま,種分化が進行します.片方の種(あるいは未分化の個体群)の絶滅があるにも関わらず,種分化が起こってそれを補い,かなりの時間断面でに 2 種が併存しているのが観察できます.
図.接触を保ったままの種分化(条件1での10,000世代)
条件 2 ではまれに 2 種が存在する時期がありましたが,ほぼ全期間で,全島共通種でした.
図.種数の推移
結果を要約すると次のようになります.
- 条件 1: かなり安定して南北2種共存
- 条件 2: 一時期を除き全土共通の1種
- 条件 3: かなり安定して南北2種共存
要するに,種分化の原因となる地理的要素は,通過不可能な地域(強い障壁)に限られるものではないということです.生存や定着が可能な地域も隔離障壁(弱い障壁)となって種分化(側所的種分化)をひきおこすことがあります.そしてその場合,地域の(弱い)障壁としての有効性は,単にその地域の生存可能性の低さではなく,隣接地域との格差が影響するわけです.
考察
条件 2 の場合,島全体は均一な環境であり,距離の効果が働く以外は種分化を促す要因はありません.これに対し条件 1 と 3 の場合には地域によって生存可能性に格差があり,この要因によって側所的種分化が進行したと考えられます.
これらの場合,南と北の山地部分で増殖した個体が周囲へと流出する二極構造が成立しているものと思われます.このため中央の鞍部では南と北から由来した個体群が生息していますが,個々には流入と部分的な絶滅を繰り返しており,島全体での遺伝子プールの撹拌が成り立たないわけです.
↑ 文頭へ ↑