地理的変化を仮定しない異所的種分化


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はじめに

 地理的変化による障壁の生成と消滅がない場合でも[異所的種分化]は起こりえます.常に弱い隔離障壁が存在しつづける状況でも,かなり面白いことがおこります.

目的

 ゆるい(絶対的でない)地理的障壁を置くことで,地理的な状況の変化なしに,異所的種分化を再現します.マップは二つの盆地の間に低い峠がある状態で,虫は頻繁に峠を越えることができます.

方法,設定


図.Highland.trrの0世代の2匹

結果

 別頁の実験経過に示す通り,西の盆地への進入,東西での種分化,西の盆地での絶滅が繰り返し(4回)起こりました.このうち西の盆地での絶滅は偶発的なものと,東の種の進入による場合があります.

実験経過参照

考察

 6回の事件以外は,およそ東西で別種が共存する状態が続き,この状態から逸脱したときに[分布拡大→種分化]によって復元しました.このように,一定の地形に流し込まれることによって一定の状態に安定する場合があります.

 実在の動物の,複数の群について同じ分布パターンが見られるとき,共通の原因,同じ地史的事件による結果と解釈される場合があるでしょう.その場合,両群の対応する種分化事件は同時期と解釈されます.

 しかし,この実験事例に示された[地理的変化を伴わない異所的種分化]の過程で繰り返し同じパターンが形成されることを考えると,異なる群での分布パターンの一致は必ずしも原因の一致さらには分岐時期の一致とはいえないことがわかります.


図.繰り返し生じる東西2種のパターン

 実在の動物の場合,異所的種分化のあと(または同時,先立って)ニッチの差異化がすすむため,二次的な接触後,同所的に共存する状況がありえます.ツノヤハズ等ではニッチの概念を組み込んでいないため,この過程は再現されません.

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