普通は,障壁の両側で独自の変化が起こる要因を[それぞれの適応]で説明しますが,もちろん[それぞれの偶然]によっても起こり得ます.地域による適応が存在し得ないツノヤハズ等では後者の要因のみが関与します.
1,000世代に海退としました.この状態では全土が1つの島になります.すると1,040世代には分布を全島に拡がりました.その後,一時期(下記)を除き10,000世代まで全島が一種の状態が続きました.
10,000世代にふたたび標準に戻しました.海峡の成立によって隔離された3個体群のうち北の島の個体群は10,200世代までに絶滅しました.中と南の島では生存し,10,500世代に別種となりました.
20,000世代にふたたび海退として陸橋を接続したところ,20,008世代には陸橋上で両種が接触する状況となりました.南の種は劣勢で,20,100世代には両種の境界が南の島に移動し,20,200世代には南の種は絶滅しました.
なお,全島がつながっているのに島内に2種が認められる状態が観察されました.これは3,100〜4,000世代の間で,北〜中央部に分布する種と南の半島部分に分布する種の2種が認められました.ところが4,100世代には(おそらく偶然に)両個体群の形質の差が小さくなり,実際に交雑が始まり,別種といえない状態になっています.その後,両群の差異は不明確となり,消滅しました.
しかし,種分化した2種は再接触後,片方が早々に絶滅します.もともと単一の種が分布していたのであり,2種が共存できる環境が用意されていないのですから,当然といえば当然の結果といえます.現実の生物の場合では,単に種分化しただけでニッチの差がない場合に相当し,競争によって片方が絶滅することになります.
異所的種分化のシナリオでは[地域ごとの異なる適応]がよく持ち出されます.これは両地域での差異が蓄積する要因として強調されますが,むしろ再接触後の両種が共存に寄与すると考えられます.
なお,3,100世代前後に起こった現象は側所的種分化と考えられます.またこれで生じた2種が結果的に[再融合?]し同一種に戻った変化は[種]の[予測]的な側面(予測が外れたことで)を示していると思われます.