ルール
ここでは[DEME],おもに[DEME.EXE]においてどの様なル−ルに基づいてシミュレ−ションを行うかを説明しています.全体としては現実の有性生殖する動物個体群をまねており,増殖能力を小さく,移動能力を小さく,個体群の大きさを小さく,形質数を限定,変異の生じる割合を大きく,時間を短縮,という方向にデフォルメされていると考えて下さい.
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環境
- 時間
- 地形と海水位
ツノヤハズ等の性質
- 個体の形質と遺伝
- 形質空間
- 配偶機構
- 遺伝,突然変異,産卵
- ♂の行動順序
- ♀の行動順序
- 生存率,突然変異率,許容差異
- 移動
時間はターン制です.

図.ターンの4段階
ターンごとに,まず(操作があれば)海水位が変化します.ただしこれが影響を与えるのは成長と生存の段階からです.
次に,ランダムに♀行動順序を決めた後,生息する各♀個体の繁殖行動を順に計算します.
その後,それぞれの卵は場所ごとに異なる生存率にしたがって産下された卵の成長,生存(逆にいえば死亡)を計算します.こうして繁殖齢期に達し,次世代成虫が出現して世代終了です.
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各地点の海抜高度は絶対的な標高と海面の上下によって決まります.海抜高度は生存率のみを支配しています.
各地点の標高の分布パターンがマップであり,地形ファイルに収められています.

図.マップJapan.trrでの海水位の変化
海面の上下は実験者の操作によっておこります.
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ツノヤハズの個体変異は次の6つの形質だけに現れます.それ以外には全く個体差がありません.
- 1.性別
- ♂か♀のどちらかです.
- ♀と♂はグラフィック的に区別しています.角と尾状突起があるのが♂,前脚脛節に外歯があるのが♀です.

図.♀(左)と♂(右)の区別(Windows版)
- 2.配偶行動
- 0〜127 の 128 の形質状態をとり得ます.
- 3.交尾器形態
- 0〜255 の 256 の形質状態をとり得ます.
- 4.生理的形質
- 0〜127 の 128 の形質状態をとり得ます.
- これらの3形質は繁殖にのみ関与します.
- 5.頭胸色彩
- 0〜15 の 16 通りを区別します.
- 6.翅鞘色彩
- 0〜15 の 16 通りを区別します.
- これら2つの色彩形質については,LOCAL VIEW(DOS版,観察画面)では 16 パタ−ンで表示しています.DOS版では全体画面でも8色で区別できます.

図.個体がもつ6形質(Windows版)
また,遺伝子の状態と形質の状態は1対1に対応します.すなわち形質状態は他の要因に影響されることなく遺伝情報のみに基づいて発現します.各々の形質状態,すなわち遺伝子の状態は抽象的に整数値で表現しています.

図.6形質の変域
これらの形質を支配する遺伝子は,交雑の際にはそれぞれ独立に振舞います.[ツノヤハズ]の個体は半数体 n = 6 で,各染色体に1形質づつが載っていると考えると近でしょう.
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前項で述べたように,各個体は6形質についてそれぞれの値をとります.
交雑に関与する3形質について考えると,各個体はそれら3形質からなる形質空間の一点を占め,これらの異同により個体間の交雑可能性が規定されることになります.
普通,変異性を含んだ個体群が,この形質空間に雲のように浮かぶ状態になります.

図.繁殖に関与する3形質の形質空間
色彩についても,16×16の256とおりの型が存在しえます.言い換えれば,各個体は色彩形質平面上の一点を占めます.

図.色彩パターンの形質空間
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♀は隣接する♂と交雑します.ある♀は複数の♂,最大6♂と隣接している可能性があるので,そのうちからある順序で♂を候補として検索し,以下の判定,処理をおこないます.
この過程で,うまくいけば産卵,悪い場合は子孫を残さず死亡することになります.

図.1♀の繁殖
候補の♂の交配に関与する形質(2〜4)について,その♀との一致を順に調べます.
配偶行動(2)の状態が雌雄で許容値以上異なっている場合,雌雄は互いに無視してスレ違ったと判定します.
♀は他の♂と交尾する可能性を残しており,次の候補の選出に戻ります.
許容値以内であれば,交尾を試みると判定し,以下の評価を行います.
交尾器形態(3)についても同様に許容値を基準に判定します.
ただし,交尾器形態が許容値以上異なる個体間では異常交尾となり,1/2 の確率で個体が死亡するものとします.他の 1/2 は交尾不成立です.♀は生存して他の♂と交尾する可能性を残しており,次の候補の選出に戻ります.
この段階を許容値以内でクリアした組合せは交尾済みとし,以下の評価を行います.交尾済みの♀は他の♂と交尾しません.すなわち♀は一回交尾という設定です.

図.隣接♂との適合性チェック
生理的形質(4)についても同様に許容値を基準に判定します.許容値を超える組合せの場合は,次世代が正常に発生せず,産卵は無効とします.無効産卵があった地点は他の♀によって産卵される可能性があるものとします.
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以上のように3つの形質に関して,すべて許容範囲内でクリアした組合せでは,♀は自分のいる位置と周囲6ヘックスに有効な産卵を行います.
卵の形質状態は基本的に両親の形質状態をモザイク状に受け継ぎます.ただし翅鞘の色彩だけは母系遺伝します.突然変異によって形質状態は1づつ増減します.
各形質は一定の頻度で突然変異します.その頻度は形質ごとに異なり,実験試行ごとに設定できます.

図.各卵の形質を決定する遺伝と突然変異
ただし,♀自身が居る位置には必ず産卵できますが,それ以外のヘックスが既に他の♀によって有効な産卵が行われている場合は産卵できない事とします.
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♀は隣接する♂と交雑しますが,ある♀に対して複数の♂,最大6♂と隣接している可能性があります.それらの♂個体がどの順序で候補となり得るか,についてのルールです.

図.隣接♂の行動順序
対象の♀に対して,1,3,5,7,9,11 時方向のうちの一つをランダムに選び,そこから時計回りか反時計回りかをもランダムに決め,順に♂を候補として検索します.
つまり♀ごとに12通りの可能性からランダムに決まります.
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各ターンで,生存するすべての♀が1回づつ交雑および産卵の機会を持つわけですが,多くの♀個体がどの順序で繁殖を行うか,についてのルールです.
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図.♀の行動順序
走査方向が一定だと固定された不公平が生じますので,各ターンで南北および東西の走査順序をランダムに決めています.
つまりターンごとに4通りの可能性からランダムに決まります.
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実験ごとに次の値を設定します.
- 生存率
- ヘックスごとの絶対標高とそのターンの海水位によって決まる海抜高度ごとの生存率.
- 突然変異率
- 6つの形質が突然変異により増減する確率.
- 許容差異
- 配偶機構での配偶行動,交尾器形態,生理形質に関して許容される差異.
あらかじめこれらの値を「実行環境ファイル」に書き込んでおき,飼育システムに読み込むことによって設定されます.

図.生存率Surv.,突然変異率Mut.および許容差異Acc.(Macintosh版)
生存率は,各ヘックスごとに,現在の絶対的な標高と海面の上下によって決まります.周囲の高度や過去の歴史,個体の存在は影響を与えません.
各形質はあらかじめ設定された頻度で突然変異が生起します.したがって,突然変異を誘発するような変異,抑制するような変異というのはありえません.
また突然変異は形質状態が一つ増減する形で起こります.
許容変異も,あらかじめ設定された値で一定しています.基準が厳格化するような変異,柔軟化するような変異というのはありえません.
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雌雄共に基本的に移動しません.ただ,♂の場合は隣接するヘックスの♀個体との交尾,♀の場合は隣接するヘックスへの産卵のチャンスがありますので,子孫が別の位置に到達するという意味での移動というか分布の拡大がおこります.
個体に注目すると,ある♀個体の子孫は次世代には1ヘックス先,♂個体の子孫は2ヘックス先に到達し得ます.
分布拡大のアニメ
個体群としてみた場合,分布の先端に♀が生息する場合,次の世代にはさらに1ヘックス先まで分布を伸ばすことができますが,先端が♂の場合には分布の拡大は不可能です.上掲のアニメの例では約21世代で14ヘックス進んでいますので,速度は毎世代2/3ヘックスです.
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