飛行計画


【スペック膨張】

 機材がどんどん高機能化するのはありがたいのですが,筆者としてはさほど複雑なことをしたいわけではないのであまり関係がありません.ツノヤハズ目線での恩恵といえば高速化と高解像度化だけです.しかし見た目はかなりの変化で,計算も描き換えも速っやい速い!全面表示で世代更新しても目に悪いくらいのスピードです.ウジャウジャ殖え,呆気なく滅びる様子は違う意味で生命を感じさせます(LIFEを速めに実行したときみたいな).
 プログラム言語もすぐ死語になるのでウンザリです.これらも分派しては滅びます.むしろ滅びた言語のほうが安定しているという考え方もあり,植物の新種記載がラテン語で書かれるようなもんです.今回の拡張も「MSXPLAYer」で行こうかとも思いました.目的からしてMSXで十分.諦めた理由は画面の大きさ(解像度)だけです.けっきょくJAVAにしました.JAVAも「いまさら」なんですけど,今後もわりとメジャーであり続けそうな感じはします.JAVAは"WORA"(Write Once Run Anywhere)とか言ってWindows(XP以降推奨)でもMacintosh(OSX以降推奨)でも動きますが,やはり同じように,完全に,というわけにはいかないようです.
 なるべく古いバージョン(1.2)へコンパイルしてますので,Windows95+JRE1.3.1でも正常に動きます.Macintoshでの動作に関しては研究中です.MRJとかいうのがあって,旧式機でJAVAを走らせるようなのですが,これはJDK1.1.6と1.2の間みたいなものらしく,たぶん無理そうです.ということはOSX以降になってしまいます.OSXでは,一応,動きます(忙しいときに画面の更新を拒否されますが).

【「飛ぶ」とは?】

 …んな大げさな![飛ぶ]くらいで… そうお考えなら,認識が浅いっす.

 一律に,あるいはテキトーに飛ばすのなら簡単です.ちょいと一行書くだけで飛ばせます.実物以上に簡単,物理的,エネルギー的制約を度外視して地球の裏側へでも飛ばせるのがシミュレーションの強みです.今回の拡張は,そういう事ではありません.
 ここでやろうとしているのは,虫にはある条件の時に飛んで移動する性質が備わっており,それにはメリットがあり,リスクも伴っている,そしてその飛ぶ性質自体が遺伝(突然変異も)する.そして長期的には移動性が発達したり退化したりする,という状況の再現なのです.

【「(も)する」とは?】

 「しなく(も)できる」ということです.

 今回追加したのは,移動および地域適応の概念です.地域への適応に関する形質は「高度適性」および「緯度適性」とし,移動に関する形質は「移動性」とし,これらが,遺伝し,突然変異するわけです.そして環境側にそれぞれの形質の効果を指定するので,効果ゼロにしておくと,そういう事のない世界になります.選択を受けようのない形質はでたらめに変異するでしょう.
 もちろん,もともと個体群の中でこれらの形質が画一的で,変異性が無く,突然変異率もゼロなら,もともとそういう事のない世界になります.
 そういう「適応」のない世界がツノヤハズの基本ルールであり,緩いトポロジーと偶然だけで(十分)色んな事が起るのです.

【「チューニング過程」で一講演】

 2007年の昆虫学会の一般講演で,本計画の一部を話しました.以前に比べると,シミュレーションへの理解が広がっているので,説明は容易になりました.ただ,多くの方は洗練された状態でのシミュレーションにしか接した事がないはずです.「ちょっと触ったら昇降舵がもの凄く利いて急上昇,あっという間に失速して墜落!]そんな状態のフライトシミュレーターは世に出てないのです.
 実際の虫なら,二三匹つかまえてきて,居た木の枝を数本いっしょに飼育ケースに放り込んでおけば,観察はできます.しかしシミュレーションでは数千匹なのか数十匹なのか,ケタさえ分からない状態から調整して行く事になります.全くの作りものなので,どのあたりが標準かを見出す過程が必要で,重要なのです.
 講演で話したのは,移動するときのリスクをどの程度にするか? です.どの程度にしたら,場合によって定着的な,移動的な個体群が現れ得るうる状況ができるのか? それをチューニングする過程を示しました.熱帯魚でいうと,水槽のノズルを調整して,水流の好きな種と嫌いな種が混泳できるようにする,みたいな事です.たった一つの数値の選定に15分間,ひっぱりすぎか?