'86年5月号

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photo:山崎和夫


TM NETOWORK
FANKSというリミックスへのアプローチ


一部は、初の海外レコーディング


 TM NETWORKは今、4月21日に発売する12インチ・シングル(先月号では4月2日となってますが、延期となった)と、5月に発売するサード・アルバムのレコーディング中だ。ほとんど休みなしで、毎日のようにスタジオにこもっている。

 「今日で、やっとベーシック・トラックになるのが、5曲分できるのね。今回のレコーディングではギター、ドラム、ベース、サックス、コーラスとか、全部メンバー以外でスタジオミュージシャンに、やってもらうんだ。多分コーラスは、海外で現地のミュージシャンを使って入れると思う。かなり、外部の血が入ってくるって感じだね」(小室)

 実際にこのインタビューの後、小室哲哉は3月8日から1週間ほどニューヨークに飛んで、コーラスのレコーディングをおこなってきている。
 そのレコーディング参加メンバー名が、小室哲哉が渡米する直前に入ってきたので、紹介しておこう。まずは、コーラスがすごいね。パワーステーションに参加したり、デビット・ボーイのアルバムや、ツアーに参加していたカーティス・キングを中心に3名という布陣となった。サックスには、ホール&オーツのレコーディングに参加しているレニー・ピケット。ミキサー(エンジニア)は、ジェリー・ビーンと一緒に組んで、マドンナのファースト・アルバムを手掛けているDac Dougherty。
 TM NETWORKとしては、海外レコーディングはもちろん初めて。それだけに留まらず、12インチ・シングル用の、コーラスとサックスのパートも、ニューヨークでミックス・ダウンを行ってくるという。

 「前々から、アメリカのグラハム・ロックの時のアリス・クーパーとかT-REXとか、あの辺のコーラスをやりたいと思っていて。アレンジ自体は、ブリティッシュ・ポップ的で、その中にすごくアメリカ臭い、モータウンぽいものとかね、マンハッタンぽいコーラスをちょっと入れたいんです」(小室)

 TM NETWORKのサウンドは、どちらかというと、ブリティッシュ・ポップ系といえる。そこへ、黒っぽいファンキーな部分を導入していきたいという。先月号で、小室哲哉が語っているような、いわゆる単純なファンキーなサウンドには、ならないだろうことは、想像に難しくない。彼、独特な手法で、ひとひねりもふたひねりもするだろうから…。
 そのレコーディングにしても、今までとは全く逆な方法で行っているそうだ。

 「今までは、ベーシックな基本となるガイドのようなものを家で作って来て、他のミュージシャンがそれを聴きながら差し換えていったの。今回は、家で弾いたテープの音が、コンピュータにデータとして残るんです。そのデータを、スタジオでやる楽器に置き換えていく。演奏は、自分が家でやっているフレーズとか雰囲気で、音はスタジオのクオリティーのある音で、ベーシックていうのが出来るんです。前は、家でやりたいなァと思ってたニュアンスが、かなり変わったの。今回はそれがなく、思っていることがそのままスケールアップされるんです。その辺は、コンピュータの進歩って、すごいですね。それで、ドンドン音を入れちゃっていくんです。今回、ドラムは青山純さんなんですが、ボーカルも入っているオケを聞きながら、ドラムを叩いたり、ベースを弾いたりするんですよ。ギター、ベース、キーボードや歌など、ある程度のリズムがあるところに、ドラムが最後に全部をひっくるめた形で、引っ張っていっちゃうの。従来の形とは、全く逆さまです」(小室)


ライブを意識した音作り


 この、今までとは全く逆の方法には、他の2人のメンバーも少なからず、驚きの声を上げている。そして反面、各々にとても楽しんでもいるようだ。

 「レコーディング前から、ずっと曲作りやデモテープ作りに参加していたんです。だから、楽しめるアルバム作りというか、TMにとっては珍しいですね。以外とTMって、楽しむというより忍耐のレコーディングだから(笑)。小室が言うように、外部の血が多いから、一緒に参加していてレコーディングが楽しいですよ。今まで、生のドラムを使ったことは少なかったしね。まァ、ある程度前提にあるのが、ライブを意識した上での音作りというところです。でも、今回のやり方は驚きましたね。リズム隊から録るというのは、普遍的なものだと思ってましたから。画期的ですよ。こういうこともできるんだ、と感動しましたね。(笑)」(木根)

 「歌入れも、詞が出来た段階で、ドンドン入れてるんです。リズム隊のドラムよりも早く。もう、前回までとは全く違ったパターンですよ。前なんか、レコーディングの前半なんかゲームをやろうとかっていう余裕もあったけど、全然ありませんね。(笑)今までは、デモテープのメロディーを耳で聞いて教えてもらい、その雰囲気で歌ってたけど、今回は譜面をおこしてますから。メロディーが決まっていて、語尾の伸ばし方も決まっていて、詞が上がってきて初めて、少し変えようかって感じです。ノリなんかも最初は機械で、途中から生楽器が入ってくるので、ドンドン変わってくるんですよ。それに体で、うまく反応しようと。いろんな勉強になりますね、今回は。その点、やっぱり楽しいですよ」(宇都宮)


心を開いて飛翔させよう


 3人、3様に今回のレコーディングを充分に楽しんでいるようだ。その楽しさが、レコード盤の溝からどのようにして表れ出てくるのか、一層の楽しみと期待で、胸が躍る。
 昨年のツアーで見せてくれた感動の“金色の夢”は、私達の心の奥底に今でも光り輝いている。TM NETWORKから分かち与えられたその夢を、皆で共有して、心を多次元的に動かす。それも良い方向に向けて…。心を、その方向のベクトルに向けることにより、体も踊り出していく。彼らは、誰もが“金色の夢”を心に宿しているならば、僕たちと一緒に楽しく踊れるよ、と語りかけているのではないだろうか。
 それは、思い悩んでいる時に青空に浮かぶ白い雲に思いを馳せて、とても高い所から地上を見降ろして、人間の小ささや心の狭さに気付く時。そして、見渡す限りどこまでも広がっている、青空の素晴らしさに気付くような時ではないだろうか。大きな自然の中に、身近な人の心の優しさや愛に、心を開放して気付いた時だろう。そこまで、TM NETWORKが、私達の心をきっと飛翔させてくれるに違いない。


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