小室哲哉 渡辺美里スペシャル対談
リズム感を養い、コードを覚えよう
今月は“Key Board講座スペシャル編”としまして、以前から行いたいと思っていた、対談をしてみました。そのゲストは、渡辺美里。小室哲哉は、彼女の1st.LPに3曲ほど作品を提供しています。リズミックで、パワー溢れるヴォーカルで、彼女は小室の歌を歌い上げています。そんな彼女は、今、キーボードの特訓中!とか。とても楽しい対談となりました。TMは、11月28日にはミニLPが、発売になりますよ。
リズムをしっかり
--美里ちゃんが、TM NETWORKを知ったきっかけっていうのは?
渡辺 高校の時に、隣の娘から「聴いてごらん」と、割と無理矢理にテープを渡されたんですよね。(笑) とても複雑な音楽やっているな、カッコイイなァって思って。
小室 会ったのは、2枚目のLPのレコーディング中で、スタジオに遊びに来てくれたりしてたんです。そして、彼女の1st.LPに曲を依頼されて、3曲提供したりして。デモテープの声を聴いたら、すごくレコードを作りやすい人だなァ、と思いましたね。
渡辺 コーラスなんかも、手伝ってもらっちゃいました。
--美里ちゃんは、楽器はどんなものが弾けるの?
渡辺 クラシック・ピアノを、小学校1年生の頃からやってたんだけど、コードをパッと押さえたりできないんです。で、勉強したいなァっていう時に、シンプの第1回目の小室さんのKey Board講座を見て、アッそうかって。実は愛読してるんですよね。(笑)小室さんは、お家で練習するんですか?
小室 全然しないんだ。キーボードがないし、ピアノもないんで…。アッ、つい最近ヤマハの安いポータサウンドを買いました。遊びに行こうと思ったら、作曲の宿題があって、事務所命令なもんで、しかたなくね。(笑)
渡辺 ピアノを始めた頃は、家にピアノがなくて、息で吹きながら弾く、ピアニカで練習してたんです。で、ピアノを買ってもらった時の、その喜びを持続させて、もう1回挑戦してみようと思います。まず、コードを覚えるのが、先とは思うんですけど。
小室 クラシックやってる人は、リズム感がないのね。メトロノームを一応買わされても、ピアノの上でホコリ被って、ぬいぐるみと一緒に置いてあったりとか。(笑)
渡辺 アッハッハハ。そう、置いてある。
小室 とにかく、コードと一緒にリズムを覚えるっていうか、鍛えてほしいな。まァ、忍耐なんだろうけど、自分が弾いてみて聴いてるのが気持ち悪いのを、気持ち良くしようという気があれば、直ると思うのね。リズムに合っていないのが嫌で、気持ち悪ければ、直ると思うんだよ。とにかく、踊るのと同じように、手までその気持ちがいって、音になればいいからね。一番悪いのは、手が疲れちゃって、ゆっくりとなったり、早くなっちゃったりすることだな。あと、コードの変わり目の時に、リズムが狂ったりとか。うまい人は、いつ変わったかわかんないでしょう。
渡辺 うん。流れるように弾いて、装飾音をつけて次へ移るんですよね。
小室 ごまかすから。鍵盤の右から左へとか、ジャラ〜ンなんていうのは、グリスを使って、その間にゆっくりコードを変えるごまかし方もあるんだ。
木根の練習方法は、卵?
渡辺 クラシックやってると、手の弾く形とかで、ポピュラーなんかやってると、手の形が悪くなるとか言われましたが。
小室 あまり関係ないと思うけど、うちのメンバーの木根なんかは、卵を持って練習したらしいよ。(笑)僕なんか、ピアノ習った事ないから、手首は下がるし、ツメも伸びっぱなし。だから、コンコンって、ツメの音が入っちゃうんですよ。レコードにも入ってるんだ、内緒だけど。(笑)まァ、魚を食べましょう。カルシウムが足りなくて、ツメがボロボロになっちゃうから。(笑)
渡辺 私も、切らなきゃいけないので、マニキュアをした、きれいにスッと伸びたツメに憧れちゃいますね。ずっと切ってきたので、今だに丸っこいですよ。(笑)
小室 それに、手の大きさっていうのも、あまり関係ないと思います。小さい人でも、うまい人がいるから。
渡辺 親指から小指までの開き具合というか、柔らかさというもんだと思うんです。
小室 ポップスだったら、左手が1オクターブは、届いたほうがいいね。
--クラシックピアノから、キーボード類で演奏するときの難しさとか、ありますか?
渡辺 指のタッチは、クラシックの場合は強いのかもしれないけれど、結局リズム感みたいなものだと思いますね。
小室 タッチは、リズムにつながってくるから。ピアノやってて、ポータサウンドを弾く人は、軽くて気持ち悪いと思うのね。リズムがとりにくいと思うんです。最初は、ちょっと押せば鳴っちゃうから。逆に、触れても、ピアノだったら音が出なかったのに、音が出てしまうとかあったりね。でも、DX7とかは、音の強弱がある程度できるから、ピアノをやっていた人には、わかると思うよ。
渡辺 フット・ペダルは、キーボードにもあるんですか?
小室 足もありますよ。(笑)結構命だね、ボリューム・ペダルとかは。
渡辺 エレクトーンの、ヒザのあたりにあるのと同じなんだ。
小室 そう。ボリュームと、サスティーン・ペダルは、プロの人なんかは必ず下に置いてるね。そして、座って弾く人って少ないでしょう。立って、操作するんだよ。
渡辺 そうなんだ…。
皆でいっしょにやるのがいい
小室 僕が初めて、最初にピアノをやらされたのが、チューリップの「心の旅」で、中学の文化祭の時なんです。赤い鳥とか…。ギターもちょっとやってて、T-レックスとかやってたんですね。レパートリーがすごくて「翼をください」の後に、T-レックスで(笑)、ムチャクチャ。それまで、左手は何をやったらわからなかったのが、その時初めて左手でベースをやるんだってわかったの。(笑)だから、バンドを組んだ方がいい場合があるよ。独奏じゃないから、リズムも皆に合わせていって、皆が何も言わなければ、左手を入れていって、ボリュームも上げていくとかね。一人だと、かなりつらい作業だと思うんだ。何はともあれ、皆でやれば楽しいもんですからねェ。
渡辺 そうですね。皆でワイワイの方が、楽しいもんですからねェ。でも、どうして小室さんはキーボードを弾き始めたんですか?
小室 とりあえず、弾けちゃったんです。スタジオ・ミュージシャンとかいう人なんかも、先天的なものがあるらしく、ちょっとやったら、結構スラスラ弾けちゃったとか多いんですよ。
渡辺 へェ〜。でも、聴いていて、アッ、この人は努力してうまくなった人だなァっていう人がいますよね。
小室 うん、いるね。アドリブのソロなんかを聴くと、努力した人は練習したフレーズとかが出てくるね。先天的な人というのは、予測できないっていうか、練習のものを、越したものがでてくるね。だから、両方を合わせ持った人が一番いいんだろうけど。
渡辺 そうですね。私もがんばって練習しよう。(笑)コードも覚えなくちゃ。
後記
今月はTM NETWORKの妹とも言えるけど、お兄さんも負けそうな渡辺美里ちゃんとの楽しい対談でした。美里は、本当に色々な面を持っていて、デビュー・アルバムは、それがよく出てるんだ。ファンの人は、その人の一面だけを好きになる場合が多いけど、美里ちゃんの多面性、各々にファンがいてほしいな。歌のカッコよさに、可愛さに、頑固さに(ゴメン!)夢中になるファンとか。どの面も尖っていて欲しいね、いつまでも。 さて、先月号に書いたコード10、覚えたかなァー。来月は、15コのコードとリズムを使った、応用編をやりますね。曲は何にしよ〜かな〜、お楽しみに。文化祭があった人とか、テープとか聴かせてよ。うん、聴いてみたいな。ほんでは、来月またね。
●小室哲哉プロフィール
1958年11月27日、東京生まれ。3才からバイオリンを始め、クラシックの英才教育を受け、17才からプロミュージシャンとして活動。上田正樹、バウワウ、大江千里など、様々なアーティストのレコーディングやライヴに参加。'84年、TM NETWORKというグループを率いて、現在の音楽シーンに登場。
●渡辺美里プロフィール
1966年7月12日、東京生まれ。小学校1年生より、クラシック・ピアノを始める。5月2日「I'm Free」で、レコード・デビュー。10月2日発売した、1st.アルバム『eyes』が、パワフルで、その若さに似合わぬ歌唱力で、好評をえている。11月17日には、大阪厚生年金中ホールで、ライブが予定されている。