野球の応援,特にラッキーセブンに風船を打ち上げることは.広島東洋カープの応援に使われたのが最初だという説が有力です.
現在では,球場に行く人のほとんど全てが揚げています,一人2本揚げている人も少なくありません.しかし,タイガースの応援に使用され始めてもしばらくの間は,酔狂な人たちがあらかじめ玩具店等で買って行って揚げているだけだったと考えられます.
甲子園での風船揚げについて,前垣和義ら編[大阪の?大疑問]という本には下記の旨の説明が載っています.しかし筑前屋はこれを全面的には信用することができません.
その要旨は;1),開発メーカーはタイガーゴムで,当初の笛の部品はブリキ製であった;2)甲子園での初使用は1984年のT-C戦で,魚側が揚げた.これをウチが[いただき]した;3)球場による認定(=球場内販売可能)は1991年である,の3点です.
全面的には信用できないとする理由は,他の部分に明らかな誤りがあるほか,直接取材による情報を元にしてはいるが,他の部分を面白く補って,話をうまく話を作っているように感じられるからです.一部は真実を含んでいると考えられるだけに残念です.
[ロケット風船]と[ジェット風船]は違います.
より古いロケット風船(図A)は吹き込み口の部分に笛がありませんでした.全体が単純なゴムの管で,先の部分は括って小さなゴムをかぶせてあり,口の部分は少し細くなっているだけでした.飛ばす時にはこの口の部分がベロベロと振動して低い音を発します.吹き込み口が太いので専用の太いストロー(図a)が付属されていました.
商品名 | 製造,販売元 | ST番号 | 価格帯 | 本数 | 形状 | 縮長 | 公称伸長 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ロケットフーセン | ? | B3563012 | ? | 2 | 筒型笛無し | 30cm |
風船を飛ばすことが流行しだすと,球場前の売店でも売るようになりました.球場付近で売られるようになったのは取り扱いが簡単なジェット風船です.
ジェット風船はゴムの風船本体と樹脂製の笛から成っています.風船本体の形状は,当初は単純な円筒形で先が太くなった形(図B,以下[筆型]とする)でした.
1995年?から売られるようになった球団承認のものも当初は筆型でしたが,1997年から3ヶ所膨らみのあるもの(図C,以下[枝豆型]とする)に変わりました.枝豆型は筆型より航続距離が短いと言われています.
1999年終盤に調べたところ,球場内外,スーパー,コンビニ,玩具店,100円ショップ等で買えるものに下記のものがありました.
商品名(ブランド) | 製造,販売元 | ST番号 | 価格帯 | 本数 | 形状 | 縮長 | 公称伸長 |
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HANSHIN Tigers ジェット風船 | シャープ産業 | B1888-571 | 200 | 4 | 枝豆型 | 24cm | 1m |
ジェット風船(タイガー印) | タイガーゴム | 4975136 20175 0 | 300 | 6 | 筆型 | 24cm | 1m |
ジェット風船(タイガー印) | タイガーゴム | 4975136 10121 0 | 100 | 3 | 筆型 | 24cm | 1m |
ジェットふうせん | トーヨー | 4902031 22131 6 | 200 | 4 | 筆型 | 24cm,12cm | 1m |
ジェットふうせん | ? | 100 | 2 | 筆型 | 24cm | ||
スーパージェットフーセン | ポニー | B0958512 | 200 | 4 | 筆型 | 24cm | 1m |
フィーバーふうせん | ポニー | 100 | 3 | 筆型 | 24cm | ||
スカイジェットバルーン | ランオンゴム | 4 992306 001088 | 100 | 3 | 枝豆型 | 22cm | 80cm |
トーヨー社の[ジェットふうせん]は,4本のうち2本短いのが混じっているにもかかわらず,約1mほど膨らむと表示しています.
笛の部品は各社ともほぼ共通していますが,ライオンゴム社の[スカイジェットバルーン](図D)のものは卵型で.横に小さな穴があいています(図d).機能は不明です.
なお[ジェット風船]自体は意匠登録されています.
公式,というべきかどうかは別にして,パッケージにタイガースの球団名を使用した,球団承認のジェット風船があります.上記のように1995?年から売られるようになりました.球場のタイガースショップで売られているのがこれです.
この公式風船のパッケージ(といってもただのボール紙)にも変遷があります.下におおよその出現時期と識別点を判る範囲でまとめておきます.
No. | 仮称 | 時期 | デザインの特徴 | 変更点 | 承認 シール |
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11 | 横縞1型 | 1995? | 表面上部は白 下部は黒と黄色の横縞と円縁虎顔,STマーク 裏面は使用方法 | ![]() | |
12 | 横縞2型 | 1996? | 表面上部は白 下部は黒と黄色の横縞と円縁虎顔,STマーク 裏面は使用方法と注意書き | 対象年齢,販売元等が明記された | ![]() |
21 | 斜帯1型 | 1996? | 表面上部は黒 下部は白地に黒の縦横縞と黄色い斜め帯,縁なし虎顔,STマーク 裏面は使用方法と注意書き | 表面のデザイン変更 裏面の使用方法が簡略化,二段落に | ![]() ![]() |
22 | 斜帯1型改 | 2000? | 表面上部は黒 下部は白地に黒の縦横縞と黄色い斜め帯,縁なし虎顔,STマークのシール 裏面は使用方法と注意書き | ST合格番号が変更,シールを貼って修正 | ![]() |
23 | 斜帯2型 | 2001? | 表面上部は黒 下部は白地に黒の縦横縞と黄色い斜め帯,縁なし虎顔 裏面は使用方法,注意書き,材質表示,バーコード等 | STマークが裏へ移り,使用方法一段落に | ![]() |
31 | 縦縞1型 | 2001? | 表面は全体に白地に濃灰の縦縞 下部に円縁虎顔 裏面は使用方法,注意書き,材質表示,バーコード等 | 表面のデザイン変更 | ![]() |
32 | 縦縞2型 | 2002? | 表面は全体に白地に明灰の縦縞 下部に円縁虎顔 裏面は使用方法,注意書き,材質表示,バーコード,URL等 | 表面の上部のHANSHINとTigersが一行に 裏面のデザイン大幅に変更,特徴のある字体を使用,アレルギー関連の記載を追加 | ![]() ![]() |
製造,販売者さえ書かれてない状態から始まって,注意書きの追加,材質の表示,バーコードの追加,URLの表示など「公式風船にも歴史あり」と感じさせます.裏面の使用方法の文章の変遷,風船を膨らませている虎の絵の変化も興味深いものがあります.ちなみにST合格番号もB188-571→4975136561366と変わっていて,後者はバーコードの商品番号と同じです.
2003年には透明袋に[世界で初めて脱タンパク天然ゴム…]と赤白で印刷したものが出現しました.中身は縦縞2型です.
レアなのはSTマークを貼りつけた[斜帯1型改]でしょう.また,釣り下げ穴がちょうど表面の"HANSHIN"の"H"のところにあいてしまう[縦縞1型]も生産数は少なそうです.
2003年春には相次いで新型のジェット風船が出現しました.
シャープ産業から発売された[くるくる回るジェット風船](ST合格番号4975136561694)は吹き口にライフル(緑色の部品)が内蔵されていて推進する際に回転が生じる仕組みになっています.
ケーツーステーションから発売された[トラッキージェット風船](ST合格番号4515732204306)にはトラッキーの顔の絵が印刷されています.
両方とも球団承認シールが貼ってあり,公式風船の一種とも位置づけられます.両方ともパッケージ(台紙)への固定方法が複雑で,取り外しに手間取るのが難点です.3アウト後に二本膨らます自信がある風船達人でも,予め取り外しておく必要があります.また[くるくる回る…]を本当に回転させるには風船を真っ直ぐに膨らませる必要があります.
2004年には[トラッキー…]が[トラッキー&ラッキー…]に発展しました.トラッキーよりもラッキーの絵の方が大きいようです(謎).
2003年に球場限定で公式風船に大阪ドームのマークが印刷されたもの(ST合格番号はおなじ)が発売されました.透明袋にもシールが貼ってあります.