不完全ルールの意義

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 ここではツノヤハズモドキやミュータロイドで設定している不完全ルールと,その意義について説明しています.
 基本ルールと拡張ル−ルの詳細については,別頁をご覧下さい.

【ツノヤハズ】

 まず,隣接する雌雄が交雑するのが基本ルールのツノヤハズ等でした.
 交雑に関与する3形質の無関係な2形質(色彩)があり,基本的には遺伝し,たまに突然変異しました.交雑に関与する形質がかけ離れたペアでは交雑できなくなります.
 交雑に無関係な色彩は生存にも無関係でした.高度ごとに異なる生存率だけによって生存/死亡が起こります.すなわち「適応」が組み込まれていないのが基本ルールです.
 誤解のないように繰り返すと,交雑に関する個体間での適応はあるが,環境への適応はない,というルールです.
 このようなルールでも,種は成立し,種分化は起こりました.

要素突然変異交雑適応
ツノヤハズ搭載搭載非搭載
マメヤハズ搭載搭載搭載

【マメヤハズ】

 拡張ルールのマメヤハズでは,適応を大幅に組み込んでいます.[移動]と[生息地域への適応]です.後者は[緯度帯への適応]と[高度への適応]を含んでいました.これら3形質が追加され,同様に遺伝し,突然変異するものでした.
 このルールのもとでは,当然の事ながら,それぞれの環境への適応した種や個体群が出現し,時には絶滅し,やがてニッチを占めるものが再び現れ,分化するという,いわば自然すぎる状況が再現されました.
 それぞれの適応個体群が種内の変異なのか連続的なクラインなのか区分可能な生態型なのか,別種なのかといった「種の問題」とは別に,「ニッチ」は時に明確に認識できます.


 ではこれらを「完全ルール」として,逆に不完全な場合,組み込む要素を落としたらどうなるのか? それが「不完全ルール」の世界です.
 このシリーズのテーマは「種」なので,「交雑」はキモなのですが,これを外したらどうなる? 「種」はなくても,それはそれで成立する事があるぞ! という展開です.
 ていうか,「交雑」を外すとプログラム上での生殖の処理は単純になりますので,スマホなどでちょっと動かしてみるには程々です.まぁ,そういう発想の産物でもありますが.

 要するに,組み込む要素を落とすことによって,ある場合には「種」は成立しません.またある場合には「多様性」が保てません.そういった,いわば当然の事を再現してみました.

【ツノヤハズモドキ】

 最も極端なものは「ツノヤハズモドキ」です.飼育システムは[Demoid].
 単為生殖し,突然変異を起こしません.適応のひとつ,[高度への適応]は組み込んでありますが,これも突然変異しない設定です.
 初期状態ではランダムな組み合わせの形質を持った多数の個体がばら撒かれています.世代を繰り返すといろんな個体がそれなりに生き残り,一見「多様な生態系」に見えます.しかし,ところどころに「絶滅危惧個体群」がめだち,もちろん実際に絶滅も次々に起こり,多様性がどんどん消耗していきます.現存する型が消滅することはあっても新型が出現することはないので,当然ではありますが.
 多様性は分化と絶滅の均衡で成り立っているのです.
 もちろん「種」は成立しません.「種類」っぽいものが見られるようでも,「型」と呼べば十分なのではないでしょうか.


【ヒメニセヤハズ】

 同様に単為生殖しますが,つまり突然変異する設定です.交雑や水平伝達はしません.飼育システムは[Demimus].
 [高度への適応]も組み込んであります.
 初期状態で1〜数個体がおり,クrーン増殖していきます.地域に適した個体が出現して一気にニッチを占有する場面も見られるでしょう.絶滅も起こりますが,「多様な生態系」は維持されます.
 当然ではありますが.多様性は多様化と絶滅の均衡で成り立っているのです.
 多様化や分化や適応放散は見られますが,これもまた「種」は成立しません.もし「種類」っぽいものが見られるようでも,「型」と呼べば十分なのではないでしょうか.

要素突然変異交雑適応
マメヤハズ搭載搭載搭載
ヒメニセヤハズ搭載非搭載搭載
ツノヤハズモドキ非搭載非搭載搭載

【ミュータロイド】

 「ミュータロイド」は人工的な外見で,甲虫ではないかも.単為生殖というかクローン増殖というか,複製されます.そして複製が不完全… 要するに「ミメニセ」の外見を変えただけです.

【ジオバク】

 業務的な事情で「ヒメニセ」や「ミュータロイド」を「山陰海岸ジオパーク」仕様に変えたのが「ジオバク」です.三色の原型ジオバクを探して遊ぼう,みたいな.


 実際の生物の多様性は,いろんな要素が複雑に絡み合って成立し,維持されています.そのため進化や適応などに関しては混乱した理解がなされることが少なくないようです.
 しかし思考実験によって整理してみると明らかで,前提となる要素と成立する現象の関係は下表のようにまとめられます.

要素突然変異交雑適応
進化必須  
多様性の成立重要 重要
多様性の維持重要 
 必須 
種分化必須必須 
ニッチの成立  重要
ニッチの継続必須 重要
※)発現しない形質の保持に重要だと考えられている
この本シリーズの遺伝システム(n)では扱ってない領域

 シミュレーションでも,当たり前ですが,思考実験の通りになります.


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