GB 1998年 6 月号
TM NETWORK
INTERVIEW
The next is gonna be
T-MUE-NEEDS
TEKKAN FUJII
 アリーナ・ツアー"KDD001 NETWORK LIVE'88 ― KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX" のステージ最後の映像に浮かび上がる文字は "T-MUE-NEEDS"。TM NETWORK が提示した新たなコンセプトだ。そして、次の時代へのキーワードでもある。
 4月9日。ツアーを終えた 3人は語る。

――"KISS JAPAN" からアリーナ・ツアーまでの 66本のコンサートを終えて思うことは?
小室「終った直後だから言うけど、意外とアッサリとできたような気がするね」
木根「単に "66" という数字では語り切れないものもありますから。期間としては、11月からスタートしたので、結局は半年を費したわけでしょ。そう考えると、長いよね」
宇都宮「長いなんてもんじゃなかったよ。(笑)」
木根「ひと冬が終わったしね。ツアーを始めたのが秋だったのに、冬が過ぎて、春になってしまったんだから。これだけ季節が変わるってことは、やっぱり長いよ」

――ツアー中に季節の変化を感じたりしますか。
木根「それは全然ないです。第一、そんな感傷的になってる暇なんてないもん」
宇都宮「ただ暑いか、寒いか、だけ。(笑)今日は、コートがいるか、いらないか、だけ」

――ラストの神戸でのコンサート中、胸にくる思いはありましたか?
宇都宮「カーテンコールのときかな。カーテンコールでスタッフを全員、ステージの上に集めたんだけど……最初は、前を向いて、みんなに挨拶して、そのあと、後ろを見たときね……特に、スタッフの顔を見たら、ジーンとくるものがありましたよ」
木根「やっぱり最終日はジーンとくるものがありましたね。金粉がパッと舞ったときに、66本を振り返りましたよ。それで、とうとう今日でツアーも終りだなあって……それを"充実感"という言葉にいいのかどうかはわからないけど。単純に今までで一番長いツアーだったからでもないだろうけど、今までのツアーの中で一番ジーンとくるものがありました。1曲1曲と終わっていくごとに、残りの曲が少なくなるに連れて、これで66本がすべて終わるんだ、という気持ちが強くなりましたね」
小室「僕に関しては、最終日の神戸は遊び心でやりました。そうしようって思ってたから、最終日の1日が始まったときから、いつもとは違ってました」

――今回のツアーは画期的な内容でしたよね。でも、ツアー中に、その画期的さが普通に思えてしまうことはなかったですか。
木根「ものすごいコンサートだって自負はあるけど、その中にいると……結局、僕たちはブランコに乗っているほうでしょ……だから、ブランコを降りて、外から見てみたいとは思うよ。すごいのは知ってるわけだから、どれほどすごいかを肉眼でね、リアルタイムでね、単純に見てみたいね。そうして、自分たちがやってることのすごさを確認したいって気持ちはあります」

――最終日(神戸)でのリハーサルが終わったあと、宇都宮さんが宙吊りに挑戦してましたけど、あのときの感想は?
宇都宮「あれは吊られてみないと、本当にわからないものだけど、結構怖いよ(笑)」
木根「誰だって怖いよ(笑)」

――木根さんも怖い?
木根「怖い。だから、吊られてるってことを考えないことにした。"もしも"とか、"万が一"って考えると、すごく怖いものだからね。それ以外のパフォーマンスに神経を集中していくわけ。僕にとっては、それがあのパフォーマンスへの馴れでしたね。

――下から見てる限りでは、宇都宮さんも平然としてるように見えましたよ。
宇都宮「きっと緊張してるのが平然としてるように見えたんじゃないの。(笑)でも、あれよりも竹馬(足長おじさん用の竹馬)ですよ。竹馬はすごいよ。ちょっと試してみようかって気にすらならなかったからね。あれは木根、すごいよ」
木根「ちょっと乗ってみようか、で乗れるもんでもないしね。それに練習してまで乗るもんでもない。(笑)」

――1回も転ばなかったでしょ。
木根「絶対に最低でも 1回は倒れるっていわれてたんだけどね、大丈夫だった。ただ、1回休んじゃったんだよね。それは今だに悔やんでます」

――TM NETWORK のコンサートの中で、最も生の部分が木根さんのパフォーマンスと宇都宮さんのボーカルだと思いますが……。
木根「ボーカルは高いところで平均してると思うよ」
小室「そうだね。ほとんどすべて及第点以上じゃないですか。みんなもそうですよ。今まで、ボロボロになったこともあるわけ、ありとあらゆる理由でガックリきた経験があって、見にきてくれた人たちの評判もボロボロだったこともあって……それだけは避けたいって気持ちが 3人の中にあるからね。絶対合格点以上のところまで作り切らないとね。だから、デキに波があるとしても、合格点より上で、しかも振幅は小さいと思います」

――ツアー中にツライ時期はありましたか。
小室「一番つらい時期というのは、次のことも考えられないで、毎日が繰り返しになりそうになったときです。演奏しているときは、次は D だとか、 G だとかって思って弾いてる瞬間があって……当然、ほとんどは無意識に弾いてるんだけど、たまにそう思うことがあって。次はこのボタンを押して、こうして、とか事務的になる瞬間が横切るんです。その瞬間、あッキテルなあ、と思いますよ。でも、次のことがジックリ考えられるようになれば、そんな瞬間はなくなります。まず、僕が最初に抜けちゃうと思うんです。頭からツアーのことが抜けちゃう。で、ひとりだけ抜けてて、他のみんなは頭も、生活もツアーのことでまわってると、ひとりだけ抜けてしまった孤独感があります。その孤独を感じたときが一番つらかったですよね。でも、ツアーが中盤から終盤になってくると、段々と抜けてくる人が増えてきて、こっちの仲間が増えるんです。つまり、次へ行こう!とする仲間がどんどん多くなるわけです。まずはこの 2人、次にスタッフとか……。そうすると、コンサートの何時間かは集中できて、他の時間は抜けられて、2倍楽しくなります」

――では、その"次"の話を聞かせて下さい。
木根「TM NETWORK の場合、ひとつのことを終えてから次の間があるようでないんです。常に、あることの終わると、次の始まりがダブっているというか、ひとつが終わったとき、既に新しいことは始まっているんです。それがロンドンでのレコーディングの準備だったりね。個人的には、人に曲を書いたり、同じ作家活動でも、文章を書いたりってことを、レコーディング前にやりたいですね。あとはテッちゃんから引き継いだラジオ。それが唯一のロンドンの情報源になるだろうから、そこで淋しがってる人たちとのパイプ役になれたら、と思っています」
宇都宮「まずは身体のオーバーホールかな(笑)」

――やっぱりカラダにキテます?
宇都宮「面白いんですけど、終わった瞬間ですよ。ツアーが終わった次の日の朝、歩けないくらいでしたから。(笑)自分では意識してなくても、緊張感でもってたんでしょうね、ツアー中は」

――で、オーバーホールのあとは?
宇都宮「またニューヨークにいくつもりです」

――日本を離れたいってことですか?

宇都宮「そうじゃなくて、"ニューヨークにいくこと"が目的です」

――そして、小室さんはロンドンへ。
小室「うん。だけど、それによって TM NETWORK の動きが止まるってイメージがあるけど、止まらないです。僕にしても、ロンドンに着いて 1週間後にはスタジオに入ってる予定ですから。それだけ止めないでいてくれるみんながいるからでしょうね。みんなっていうのは、家でレコードを聞いてくれる人もそうだし、コンサートにきてくれる人もそうだし、スタッフも入るだろし……嬉しいですね」




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